かのちゃんからのついったお題(ゾロサン)

@kano_32suki: きっと素敵なお話を書いてくれる(*´Д`*) @snowteaさんは、「夜の海辺」で登場人物が「逃げる」、「手錠」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927

 ゾロは憮然とした顔で、そのきんきらの髪からのぞく顔を盗み見た。サンジのそれは、現状をやや面白がっているような表情で、それがいっそうゾロをしかめっ面にさせる。自分がこうならざるを得なかった原因は隣の部屋でにゃあにゃあと鳴き、まるでサンジを呼んでいるようにも聞こえて、やはりゾロの面白くなさそうな顔はもとには戻らなかった。
 夕日は、どのくらい前に海の向こうへ沈んだだろうか。たまに面白い言い回しをするウソップ風に言うのなら、"とっくの昔" だ。サンジがここへ来たときには、開いた扉の向こう側、月が鮮明に夜空に輝いていた気がする。
「おっ、」
 カシャリと音を立て、同時にゾロの両手首が圧迫感から解放された。多少うっ血し、豆状骨辺りに血がにじみ出てはいるが、それでも手当てしろとわめく傷でもなければ、涙する痛みでもない。こんなこと心配性なチョッパーに言うと面倒にも説教を垂れることがあるので言いはしないが、大抵は舐めておけば治る。
 カシャリの正体をサンジがつまみ上げ、あほだなァてめェもと口にされれば、ゾロは追うように音の正体を目に入れた。サンジが手にしたのは手錠で、しかも自分が力を入れさえすれば簡単に壊れてしまいそうな軽い作りのもの。
「まァ、悪かねェ」
「あ?」
「天下のロロノアが、ねこ一匹助けるために罠にかかりました。……ってのが」
 まァ、悪かねェよなと、サンジは笑う。
 なんのことはない。迷子になったゾロに親切にも道を教えてくれた男というのがとんだ大ホラ吹きで、連れてこられたのは海辺にある古びた小屋。大道芸をやっていたという自己紹介めいたもののせいでいきなり手錠につながれた。壊せばあっちの部屋がバーンだと、示す先には小さな扉。だからなんだと力を入れようとした耳に聞こえたのは猫の鳴き声だ。イーストブルーの魔獣と呼ばれた男が、それこそだからなんだと、思えなかったのはなぜなのか。にゃあにゃあと鳴くねこの声に、目にしてもいないそのねこに、情が沸いたのはあの船に乗っていたら仕方のないことなのだ。
「それにしても、クソみてェな仕掛けだな」
 サンジがふらふらと揺らす手錠にはピアノ線が一本だけくっついており、天井を伝うそのピアノ線の先はやはりねこのいる隣の部屋へと続いている。鍵がないからあけることはできないが、このピアノ線がどういう原理で爆発を起こすのか、両手が自由になったゾロが立ち上がり、手錠をもったままのサンジを素通りすると力任せにそのドアを開けた。鍵なんてクソ食らえだ。
 隣の部屋、天井から垂れ下がったピアノ線の先には多少大きいかなと思える程度の石が括りつけられてた。まったく危険のないそれに、じゃあ別にいいのか、そうとりわけ意味のない納得をし部屋の端でにゃあにゃあと鳴くねこに歩み寄る。ねこはゾロを警戒するでもなく、足元にまとわりついてまたにゃあとひと鳴き。そこでやっと安堵の息がゾロから零れた。
 隣の部屋に戻れば、サンジは先ほどと同じ格好でピアノ線のついた手錠を持ったままだった。ゾロの手の中にいるねこに気づき、一瞬だが柔らかい笑みを見せた、── と、ゾロは思ったのだが、次の瞬間罵声に変わる。
 おい、おれァもう行くぞ、もういいんだろ、ナミさんに怒られちまう、そう言えばそうだ。この男は夕食の用意という日々の仕事をせずにここにいる。
「これ離したらどーなるんだ?」
「知らねェ」
「てめェの頭は本当にマリモだな」
 危ないか危なくないかぐらい言いやがれ、サンジの言葉に返す、ただの石だったと。言うが早いかサンジは手錠を手から離し、隣の部屋で石の落ちる音がするとともに、ピアノ線に引っ張られるように手錠が宙へ舞った。先ほどのゾロ宜しくしかめっ面のサンジはため息をつき、なにかボソボソと呟きながらゾロに向き直った。
「クソマリモ」
 自分が悪いとは思わない。しかしサンジが悪い現状でもないので、なんだと問い直しはしないが文句があるなら甘んじて受けよう。
「行くぞ」
「………あァ?」
「ねこはてめェで持ってけよ」
 そう広くない部屋を横切り、一時前入ってきた扉を開ける。窓から見える景色と変わりなく、外は夜だ。サンジの後ろをゆっくりと追い、小屋から出たゾロは首をかしげた。みゃあああと鳴くねこにはお構い無しに。
「おい、」
「話は後だ。走るぞ。ついてこいよ。また迷子になったらおまえ本当にブッ殺すからな」
 サンジの声に続くように、小屋の向こうのわき道から大勢の足音が聞こえる。なんだと目を瞠れば、見覚えのある男に、見覚えのある海軍服の男たちがいた。そう言えば、あの大道芸人はなぜ自分を狙ったかなどと考えもしなかった。忘れていた、自分は賞金首なのだということ。
 そんなゾロを見透かし小ばかにしたような表情を浮かべるサンジにも、はやりもうなにも言い返すことはできず、ぐうの音も出ないってなァこのことか、ため息づいて手の中のねこをしっかりと抱く。見失ったらそれこそ面倒だと、きんきらの頭をたよって夜の中を駆け抜けた。




かのちゃんはゾロサン好きだからゾロサンにしようと思ったのになかなかうまくいきませんでした。てゆかもやしもん見ながら書いたからなんかもうわけわからなくなったごめんください。